
貸切バスの行政処分とは?処分基準と事業者が取るべき対応を解説
はじめに
貸切バス事業者への行政処分等は、重大事故や悪質な違反だけを対象とするものではありません。
点呼、運行指示書、運行記録計など、日々の運行管理に不備があった場合も処分の対象になります。
監査では、安全に運行しているかだけでなく、必要な確認や記録を適切に行い、保存しているかも確認されます。
業務を実施していても記録が不足していれば、適切に実施したことを確認できず、行政処分等につながりかねません。
本記事では、貸切バスの行政処分等の基準や主な違反、点数制度、処分を防ぐために確認すべき実務を解説します。
あわせて、予約から配車、運行、請求・未収までを一元管理する「楽々道中」が、記録不備や確認漏れを減らす運行管理をどのように支援するかも紹介します。

目次[非表示]
貸切バスの行政処分等の基準とは
貸切バス事業者への行政処分等は、違反内容だけでなく、同一違反の回数や処分日車数の合計によって決まります。
まずは、根拠となる通達と別表、処分の種類、初違反・再違反・累違反の考え方を確認しましょう。
行政処分等は国土交通省の通達と別表に基づく
貸切バス事業者に対する行政処分等は、国土交通省が定める「一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」と「違反事項ごとの量定を示した別表」に基づいて行われます。
行政処分等の基準は、違反を罰するだけでなく、安全な運行管理体制を確保するための仕組みです。別表では、道路運送法や旅客自動車運送事業運輸規則の条項ごとに、違反行為と初違反・再違反の基準日車等が示されています。
参考:国土交通省|一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(令和7年2月改正、4月施行)
行政処分等の種類
行政処分は、軽いものから順に「自動車その他の輸送施設の使用停止」「事業停止」「許可取消」の3種類です。
これらに至らない措置として勧告と警告があり、行政処分とあわせて「行政処分等」と呼ばれます。
違反が確認されたからといって、直ちに事業停止や許可取消になるわけではありません。
違反ごとに定められた基準日車等を合算し、処分日車数が50日車以下となる場合は、原則として使用停止処分ではなく警告となります。
ただし、事業停止や許可取消の要件に該当する場合などは除きます。
参考:国土交通省|一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(令和7年2月改正、4月施行)
初違反・再違反・累違反の考え方
行政処分等の量定は、同じ違反を過去3年以内に繰り返しているかによって変わります。
違反を確認した日から過去3年以内に、同一営業所で同一違反による行政処分等を受けていなければ「初違反」、1度なら「再違反」、2度以上なら「累違反」です。なお、一部の違反では、営業所が同一かどうかを問わず判断されます。
先程の別表には初違反と再違反の基準が示されており、多くの項目で再違反は初違反より重く設定されています。
累違反は、再違反の基準日車等が警告の項目を除き、原則として再違反の2倍です。
参考:国土交通省|一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(令和7年2月改正、4月施行)
参考:国土交通省|【別表】(貸切)違反事項ごとの行政処分等の基準(令和7年2月改正、4月施行)
貸切バスで行政処分につながりやすい主な違反
貸切バスの行政処分等の別表には、運賃や労務管理、車両整備など幅広い違反が定められています。
そのなかでも、点呼や各種記録、運行指示書、運行記録計は日常的に繰り返す業務であり、実施漏れや保存不備が処分に直結する項目です。
ここでは、運行管理の現場で特に確認しておきたい4つの違反を解説します。
点呼の未実施・不適切な点呼
点呼の実施義務違反は、「未実施」「不適切」「軽微な違反」「飲酒運転防止に係る点呼実施義務違反」の4区分に分けられています。
「未実施」は、点呼をまったく行わなかった場合だけを指すものではありません。
原則として、以下も含まれます。
- 対面によらず電話などで行った点呼
- 業務開始後に行った点呼
- 業務終了前に行った点呼
- 要件を満たさない補助者による点呼
- 運行管理者や補助者による自己点呼
ただし、電話などによる点呼には運行上やむを得ない場合などの例外があり、点呼を実施したことを書面等で明らかに証明できる場合も別に扱われます。
「不適切」に該当するのは、点呼事項の一部を確認していない場合や、アルコール検知器による酒気帯びの有無を確認していない場合です。
アルコール検知器が1器も備えられていない場合は初違反で60日車、正常に作動しない検知器で確認した場合などは初違反で20日車となります。
参考:国土交通省|【別表】(貸切)違反事項ごとの行政処分等の基準(令和7年2月改正、4月施行)
点呼記録・録音録画・アルコール検査写真の不備
点呼を実施していても、点呼記録の作成や保存に不備があれば、点呼の実施義務とは別に処分の対象となります。
点呼を実施したかどうかは原則として点呼記録によって確認されるため、実施と記録を一体で管理することが重要です。
※いずれも初違反の場合
貸切バス事業者には、点呼記録に加えて、点呼状況の録音・録画と、アルコール検査状況の写真を記録する義務があります。
これらはそれぞれ別の違反項目として扱われ、記録の改ざんや不実記録は初違反でも60日車です。
また、点呼記録は電磁的方法で保存しなければなりません。
点呼記録、音声・映像、写真を別々の端末や媒体で管理する場合は、保存場所やファイル名の付け方、確認担当者を統一し、対象となる運行や乗務員を追える状態にしておきましょう。
参考:国土交通省|【別表】(貸切)違反事項ごとの行政処分等の基準(令和7年2月改正、4月施行)
参考:国土交通省 九州運輸局|貸切バス事業者のみなさまへ(デジタルも活用した新たな安全ルール)
運行指示書・業務記録・運行記録計の不備
業務記録、運行記録計の記録、運行指示書には、それぞれ作成・記録や携行、保存に関する義務があり、いずれの不備も処分の対象になります。
※いずれも初違反の場合。改ざん・不実記載はいずれも初違反で60日車
運行指示書は、作成するだけでなく、その内容に基づいて乗務員へ指示し、車内に携行させ、運行終了後に保存する必要があります。
未作成や指示の未実施、不携行は初違反で30日車となり、記載事項の不備も警告の対象です。
予約情報や行程、乗務員、車両を紙やExcelで別々に管理している場合、行程変更や車両変更が一部の帳票に反映されないおそれがあります。
運行指示書を出力する前に、最新の予約・配車情報と一致しているかを確認しましょう。
参考:国土交通省|【別表】(貸切)違反事項ごとの行政処分等の基準(令和7年2月改正、4月施行)
デジタコ義務化への対応不足
貸切バスの事業用自動車には原則として運行記録計の装着が必要であり、現在は車両の登録時期に応じてデジタル式運行記録計への移行が求められています。
令和6年4月1日以降に登録された車両は登録時から、令和6年3月31日以前に登録された車両は令和7年4月1日以降、デジタル式運行記録計に限られます。
ただし、自動車の構造上の理由により、告示で定める運行記録計を備えることが困難な車両には例外があります。
自社車両が例外に該当するか判断できない場合は、管轄の運輸支局へ確認してください。
デジタコを装着するだけで対応が完了するわけではありません。
運行記録計のデータは電磁的記録として3年間保存する必要があり、記録なしや保存なしは初違反で30日車です。
データの出力方法や保存先、バックアップ、確認担当者まで運用ルールを決めておきましょう。
参考:国土交通省|【別表】(貸切)違反事項ごとの行政処分等の基準(令和7年2月改正、4月施行)
参考:国土交通省 九州運輸局|貸切バス事業者のみなさまへ(デジタルも活用した新たな安全ルール)
行政処分等の点数制度と重い処分の考え方
貸切バスの行政処分等では、違反ごとの基準日車等を合算した処分日車数に応じて違反点数が付され、事業者単位で累計されます。
点数が一定水準に達した場合だけでなく、安全管理体制の重大な欠如や是正措置の未実施によって、事業停止・許可取消となる場合もあります。
ここでは、点数制度と重い処分の主な条件を解説します。
10日車までごとに1点が付される
行政処分等を行う事業者には、基準日車等を合算した処分日車数について、10日車までごとに1点の違反点数が付されます。
たとえば、処分日車数が30日車なら3点、35日車なら4点です。
警告となる場合でも、基準に該当すれば点数が付けられます。
違反点数は営業所ごとではなく事業者単位で累計され、主たる事務所を管轄する地方運輸局が管理します。
累計期間は原則3年間で、それぞれの点数は行政処分等を行った日から3年を経過した時点で消滅します。
ただし、行政処分等を受けた営業所が一定の条件をすべて満たす場合は、2年で点数が消滅します。
条件は、処分前の2年間に行政処分等を受けていないこと、必要な措置を履行して処分後2年間に行政処分を受けていないこと、重大事故等を起こしていないこと、酒気帯び運転や無車検運行などがないことです。
参考:国土交通省|一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(令和7年2月改正、4月施行)
事業停止・許可取消につながるケース
違反点数の累計が51点以上になると事業停止、81点以上になると許可取消の対象です。
ただし、事業停止や許可取消は点数の累計だけで判断されるものではなく、重大な違反や命令違反、是正措置の未実施なども処分要件に含まれます。
点数が51点に達していなくても、次のような違反は事業停止の対象になります。
- 運行管理者が選任されていない
- 勤務時間・乗務時間の基準が著しく守られていない
- 全運転者への点呼や指導監督をまったく実施していない
これらの指定違反は原則として違反ごとに30日間の事業停止となり、30点が付されます。
指定された重大違反によって事業停止処分を受けた事業者が、処分日から3年以内に再び同一違反を行った場合も、許可取消の対象です。
一部の違反では、同一営業所で繰り返した場合に限られます。また、使用停止・事業停止の命令に違反した場合や、監査後も是正措置を講じなかった場合なども許可取消につながる可能性があります。
参考:国土交通省|一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(令和7年2月改正、4月施行)
街頭監査で確認されるポイント
街頭監査で、次のような違反が確認されると、是正が確認されるまで当該車両の使用停止処分が行われます。
- 所要の交替運転者がいない
- 運転者の疲労や疾病により安全運行を継続できないおそれがある
- 点呼を実施していない
- アルコール検知器を所持していない
- 運行指示書を作成・携行していない
使用停止処分は、安全確保のため緊急に行う必要があることから、弁明の機会を付与する手続きを経ずに実施されます。
街頭監査を行った地方運輸局や運輸支局の管轄外に営業所がある事業者も対象です。
停止期間は、その後に算定される処分日車数から差し引かれません。
街頭監査は事業者を特定せず、発着場などで無通告に実施されます。
出庫前には、点呼やアルコール確認を終えているか、運行指示書に必要事項と最新の行程が反映されているか、車内に携行しているかまで確認しておくことが重要です。
参考:国土交通省|一般貸切旅客自動車運送事業の監査方針について
行政処分を受けないために貸切バス事業者が確認すべきこと
行政処分を防ぐには、監査の直前に帳票を整えるのではなく、点呼や運行指示書の作成、各種記録の保存を日々の業務フローとして定着させることが重要です。
担当者の経験だけに頼ると、繁忙期や行程変更が発生した際に確認漏れが生じるおそれがあります。
ここでは、点呼とアルコールチェック、運行指示書と業務記録、保存期間と検索性の3点から、貸切バス事業者が確認すべき実務を解説します。
点呼とアルコールチェックの運用を標準化する
点呼では、実施者や実施時刻、確認項目、記録方法、保存先を営業所内で統一します。
運行管理者だけでなく、補助者が点呼を行う条件や、担当者が不在となる場合の対応まで定め、誰が担当しても同じ手順で実施できる状態にしておきましょう。
点呼を行う時刻と方法にも注意が必要です。
業務開始後に行った点呼や運行管理者・補助者による自己点呼は、原則として未実施に該当します。早朝・深夜の運行や遠隔地での業務開始がある場合は、適法に実施できる点呼方法と担当者を事前に決めてください。
記録と保存までを一連の手順に含めることも欠かせません。
点呼記録は電磁的記録として3年間、点呼の録音・録画とアルコール検査時の写真は90日間保存します。
紙に記録した点呼簿は、点呼日から1週間以内にスキャンしてPDF等で保存し、日付、運転者、点呼実施者を追えるように整理しましょう。
参考:国土交通省 九州運輸局|貸切バス事業者のみなさまへ(デジタルも活用した新たな安全ルール)
運行指示書と業務記録の作成漏れを防ぐ
運行指示書には、運行の開始・終了地点と日時、乗務員、経路と主な経由地、休憩地点、交替地点など、運行に必要な情報を記載します。
予約時に得た情報をそのまま転記するのではなく、配車や行程が確定した時点の内容を反映することが重要です。
予約管理や配車管理、運行指示書の作成が別々の帳票に分かれていると、行程や車両、乗務員の変更が一部に反映されないまま出庫するおそれがあります。
特に、直前の時刻変更や経由地の追加があった場合は、古い運行指示書が残らないよう版管理を行いましょう。
参考:国土交通省 近畿運輸局|バス運行管理者の業務(旅客自動車運送事業運輸規則第48条)
保存期間と検索性を意識して記録を管理する
貸切バス事業で義務付けられている書類や記録は、種類ごとに保存期間・保存方法・起算日が定められています。主な対象は以下のとおりです。
保存期間を満たしていても、監査時に対象記録をすぐ提示できなければ、確認に時間がかかります。
点呼の録音・録画と写真は点呼日を1日目として90日間保存し、運送引受書は契約終了日を1日目として3年間保存するなど、起算日も含めて管理ルールを定めましょう。
電子データは、案件、運行日、車両、乗務員などの条件で検索できるよう、フォルダ構成とファイル名を統一します。
保存先を担当者個人に依存させず、アクセス権限、バックアップ、保存期限後の削除方法まで決めておくと、監査対応や社内の引き継ぎを円滑に進められます。
参考:国土交通省 近畿運輸局|バス運行管理者の業務(旅客自動車運送事業運輸規則第48条)
参考:国土交通省|貸切バス運送引受書の交付・保存の義務について

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まとめ
貸切バス事業者に対する行政処分等は、国土交通省の通達と別表に基づき、違反内容や過去の処分歴、処分日車数の合計などを踏まえて決まります。
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